ロシアのオランダ人街に電車で旅しに行く夢を見た。
現実のロシアにオランダ人街はなさそうだし、そもそも今ロシア旅行は何重もの意味で行けない。
夢なのに、要素要素が妙にリアルだった。海外旅行できていない今の身がかなしくなるくらいに。
他人の夢の話はつまらないとは言うけれど、ただの日記として書いてみる。
ロシアに団体で旅行に来たらしい。
でも、団体行動なんて抜け出て、一人旅しようと思い立ち。電車に乗った。
脳裏で誰かの声が響く。
「18きっぷっていうのはね、過程こそが旅なんだよ」
そんな実在しないフレーズに共感しつつ、車窓を眺める。
有名らしい駅を次々過ぎていく。少し不安になり、行ったことのある遊園地でもう降りてしまおうかと思う。いや、行きたい場所がもっともっと先にあるんだ、と思い立つ。何枚綴りにもなった長い長い切符を駅に着くたび車掌に渡す。
やっとオランダ人街に降り立つ。ネットで見たマイナーな観光地という認識だった。カジュアルな駅員の兄ちゃんに、市中に戻る終電はいつかと英語で聞く。平均して20時から20時半の間、昨日は15分発だったよと返ってくる。海外特有のアバウトな時間感覚。
着いた頃には夕方16時くらいの感覚で、ぜんぜん観光時間ないじゃない、と思った。せっかく遠出するならこっち側に宿取ればよかったと後悔する。
最初、礼拝施設にいく。どう見てもオランダというよりアジアっぽいけどやたら神秘的な場所で、入った瞬間パワーにフラッとやられる感じ。手を合わせお参りし、外に出て観光。
まずはパンネクック屋に行こうとした。パンネクックはオランダのパンケーキで、ちゃんと実在する。
3Dフラクタルっぽい幾何学的な石造りの通りを横に見つつ歩き。日本人街ビルに迷いこんだ。やたらとにぎわう座敷のしゃぶしゃぶ店があり、中にいた日本人男性2人が私に話しかけようぜと話し合っていた。店に入らず外に出たところで日本語で話しかけられて、無視しかけた。
私は海外旅行の高揚を味わっていたのだ。本当に帰りつけるのか確証も計画もないまま、ただ行きたくて遠くに来た、という。スリル半分の。ただ歩いているだけですべてが異国で楽しかった。そこに日本人の邪魔が入ったな、という感覚。でも、一言二言交わすのも旅だよね、みたいな発想なのか、あんたさっき話しかけようぜって話し合ってたでしょ、と言った。面食らったのか何も返ってこなかった。
それからまたパンネクック屋を探した。もしロシア基準の接客がゆっくりだったら食べ終わって観光できないななんて思いつつ。
途中、超細い街路にカラフルな店といっぱいのぬいぐるみのあるガーリーな街道があった。
細さはスペイン・コルドバの花の道くらい。
色味はメキシコ・グアナファトの街並みをもっと強くした感じ。
時折スマホカメラしか持ってこなかったことを悔やみながら写真を撮った。小さい空港の案内も見つけ、市中からの遠さが伺われた。
そんな寄り道をしながら、パンネクック屋をやっと見つけた。閉店中だった。
そんなオチのない夢。
夢のわりには、わたしの行動が海外旅行をしていた時代のわたしそのものだった。
ほぼ無計画で一人旅に飛び出す。ちゃんと帰れるかも怪しいのに、そのスリルすらも楽しむ。長い長い電車旅。あまりメジャーじゃない観光地。
過去の旅行を思い出される要素ばかりで。
何より、海外旅行特有の浮き足立つ感覚がリアルだった。
現実バイバイしていく電車の感覚。
一人旅特有のリスクを思いつつも、それでもどうしても一人でしか得られない高揚感。
「18きっぷっていうのはね、過程こそが旅なんだよ」というフレーズの納得感。
実在しないフレーズだけれど、確実に概念としては実在する。夢の中でパンネクック屋が開いていないとわかったときもそこまで落胆はしなかった。旅の目的はパンネクック屋じゃなくて、そこに至るまでの過程だったから。
ひるがえって現実。
3連休はどこにも行かず。来年から3連休の日取りが悪くなって減るんだから今年中に行ったほうが良いとわかっているのに動けない。
何か、国内旅行ですら、自分に何かを決められる、何か変化を起こせる、とは思わなくなってきてしまったように思う。無力感の重症化。
もしくは何か切羽詰まったきっかけでもないと行動が起こせない。夏休みの日取りが決まったとか、今しか行けない何かがあるとか、そういうきっかけがないと本当に頭に選択肢として上がってこないように思う。前々から計画するという行為がしんどくなった。
無計画に飛び出せていた夢の自分が心底うらやましい。あんなに浮き足立つような旅の感覚はいつか現実に戻ってきてくれるのだろうか。
今日はこのくらい。
○今日の過去記事○