ドイツ南西部、フランス国境にほど近い場所にあるフェルクリンゲン製鉄所。
世界で初めて世界遺産登録された産業遺産でもあり、「産業文化の大聖堂」とも称される場所に行ってきました。
これがもう、衝撃的だった。日本じゃマイナーだけど、もっと知られるべき。
以下写真たっぷりなので注意。
フェルクリンゲン製鉄所とは
フェルクリンゲン製鉄所(英: Völklingen Ironworks 独: Völklinger Hütte )とは、
ドイツ南西部所在、19世紀後半から1986年まで稼働していた製鉄所。
1994年に、産業遺産としては世界初のユネスコ世界遺産に登録される。
一周7km、所要時間2〜3時間程度。
産業遺産にも、廃墟にも興味がある私。
今回の旅で早い段階から行きたいところリストにあげられていた場所でした。以下2016年8月下旬段階の情報。
嬉しいことに、18歳未満と学生は入場料無料。通常の大人料金は15ユーロ。
しかも学生証必要とのことだったのに見せなくても通った。
チケット販売所の人にドイツ語で「〜〜〜ステュデンテ?」と聞かれてうなずきつつ財布出そうとしたら「ナイン、〜〜〜〜フレイ(無料)」と言われた。びっくり仰天。
写真
スマホカメラの限界なぞとっくに超えていたのでご了承ください。このときほど一眼欲しくなったときはなかった。
送風装置ゾーンの巨大な歯車。
資材倉庫ゾーン。張り巡らされた資材運搬用線路。
溶鉱炉ゾーン。枝分かれした形が特徴的な高炉。
ジブリの某映画を思い出すような機械。
階段を登る。
資材運搬用モノレールの線路。
モノレール用メモ看板とおぼしきもの。
妙に近未来な雰囲気漂う。
全体的にすごく「きれい」な印象。特に大幅に崩れているような場所がない。
さびさえ無ければ今にも動き出しそう。
この草木、あえて残されたような雰囲気が漂う。
一番高いところは45m(≒ビル15階)超え。
床は金網。あまり見下ろすと足がすくむ。
登りより下りのほうが怖かった。
配電盤。
今でも使えるといわれたら信じそう。
歯車。
壁に何かの数字。
地上に降りてきて、1km以上に及ぶ長い庭園ゾーン、「パラダイス」に向かう。
ここでの労働は「灼熱と鼻を刺すような煙ーすなわち地獄」であったそうな。
それが今や草木のパラダイス。
随所に散りばめられたアート。
こういった場所を公式にアートの場として提供しているのはすごく新鮮。
建物も他のゾーンとは違い、あえて手付かずのまま残しているような雰囲気。
そろそろ帰路につく。
入り口
最初の難関。入り口がわからない。
入り口近くの製鉄所インフォメーション&チケットオフィスが閉まってた。なにそれ。休館日でもないはずなのに……と心底焦る。
本物のチケットオフィス&入り口はこっちでした。
見た目はどう見ても仏教美術展。
しかし、チケットオフィスは製鉄所と美術展共通。製鉄所の一部が仏教芸術展になっていて、内部通路で他の製鉄所の建物ともつながっているという仕組み。見事なまでの初見殺し。
チケットオフィス前に英語マップがあるのでもらっておきましょう。中に入るとすぐコインロッカーもあります。要1ユーロ硬貨。
中に入ってからもしばらくは仏教美術展。製鉄所に抜けるにもだいぶ迷いました。仏教美術展近くの出入り口から、自販機や昔の道具が置いてある方面に向かうと階段がある。そこを抜けて通路を歩くと製鉄所のスタート地点の表示。
考えたこと
産業遺産といえば去年、「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産登録されましたよね。
去年私も軍艦島はじめとする長崎の周辺訪れたことがあるんですが、そことは根本的に違うなと。
まず保存の完璧っぷりに驚き。ガラスケースに入って保存されていたかのような。
今にも崩れ落ちそうで危ない、という場所は目視した限りでは見当たらなかった。さびさえ取り除けば今にも動き出しそうな勢い。
見学できる範囲もとんでもなく広い。柵が設けてある場所も多いけど、こんなところまで入っていいのか……と呆然とするくらいの場所まで行ける。
気候条件もあるだろうけど、閉鎖直後から州政府が保存し続けてきたというのは伊達じゃないなと思った。
何より、見せ方がものすごく特徴的。
驚いたのはアートとの融合。
資材倉庫にはチャーリー・ブラウンのグラフィティ。
こんな場所に描いちゃっていいの???と混乱。
送風装置ゾーンには先ほど紹介した仏像展がでかでかと開かれている。
なぜ製鉄所で仏像展???と混乱。
「パラダイス」の存在も衝撃的だった。
他の区画は時の経過を感じさせないがごとく完璧に保存されているのに、
「パラダイス」だけいわゆる「廃墟」のイメージをそのまま再現したかのような場所。
「廃墟は手付かずのまま朽ち果てて自然に還っていくのがいいのだ」という
廃墟の理想形をまるごと仕立て上げたかのような場所。
もちろん完全に手付かずなわけじゃない。アートもあればベンチのある広場だってある。
「廃墟は手付かずのまま朽ち果てていくのが良い」と聖域化する発想でもなく、
「ここは朽ち果てさせてはいけない、最大限当時の姿のまま留めて歴史を守ろう」と邁進する発想でもない。
自覚的に「手付かずの廃墟感」を演出しつつ、
新しい要素を付け加えていく発想とでも言おうか。
そんな発想は他では見られないだろうなと思う。
印象に残ったのはこの案内板。
廃墟のオーラ
廃墟はバロック期のヴァニタス概念の具象である。ヴァニタスとは、すべての生きとし生けるもの移ろいの観念であり、風景画の中心的概念である。コークス製造所はそのはかない本質を我々に示している。
最初は人が建物から去った。建物は廃墟と化し、動植物に支配された。今ふたたび人は廃墟のオーラを感じ取るために戻ってきている。
純粋な産業文化ー崩壊こそが土地の歴史を保存するのではない。新たな生命と視点こそが土地の保存を確かなものにするのだ。
いろいろ考えは膨らむけど自重して、
今日のところはこのくらい。