オランダで買ったデンタルフロスを使い切りました。
なんてことのないデンタルフロス。ルームメイトが同じもので中国語英語表記のを持っていたし、世界各国展開しているもよう。
でも、なんとなく捨てがたくなった。
なぜって、向こうでの「いかにもな日常」の象徴のように思えたから。
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モロッコに旅行中、店員に言われた言葉。
「日本の物を何かくれれば引き換えに安くするよ」
そのときの私は、面白いくらい日本の物を持っていなかった。
ティッシュも、お菓子も、筆記用具も、全部ヨーロッパで手に入れたもの。
たった数ヶ月前、あんなに日本の日用品をたくさん詰め込んで出てきたはずなのに、半年足らずで現地のものに入れ替わってしまっていた。
そんなことに気付かされた一言だった。
そして、使い切ったデンタルフロスを見た時、そのとき同じことがまた起きているな、と思う。
オランダであれだけ買ったはずの日用品も、どんどん日本のものと入れ替わっていく。
残り続けるものだと、たとえばショットグラスとか、マグカップとか。たしかにマーストリヒトの柄が入っているけれど、日常的に使ってはいるけれどそれはあくまで「おみやげ」の領域に入るもの。
「いかにもな日常」からちょっとずつなくなっていってしまうのは、かなしい。
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先日、実家で母が「懐かしいでしょう」と
アルバート・ハインというオランダのスーパーのチラシ。
留学時代にしょっちゅう通ったところ。
そこのチラシなんて、もう、日常の詰め合わせボックスのようなもので、
こういうものこそ持ち帰るべきだったのかもなと思った。
ハイネケン24缶入りケースがこんなに安かったんだよな、なんてことを思い出した。ビールが安いこととか何回も写真に撮った記憶はあるけれど、チラシとして見せられるとまた違う。日常の肌感覚を思い出すような、そんな感じ。
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思い出すのはこちらのツイート。
昔のカメラは、フィルムを24枚とか36枚とか使い切らないと現像に出せなかった。旅行先で撮った写真を早く見たいがため、帰宅後、残り数枚を近所の街並みや家の中など適当に写して使い切った。
— なかけん (@naka_kane) February 15, 2017
今になって貴重なのは、やはりそういった生活圏内の日常風景の方だ。観光地の風景は意外と変わらない。
日常的なものほど変わりやすくて貴重。
なるほどと思って、オランダからの帰国直前には日常の場所こそを写真に撮りまくりました。
画像検索しても出てこないような場所。
寮の近くのラウンドアバウトとか、
スーパーのヨーグルトの棚の充実っぷりとか、
よくチャリで散歩した橋の周辺とか。
そして、撮っておいてよかったとつくづく思う。
日本に帰国してガタッと写真撮影の回数が減りました。
それはきっとよろしくないんだろうな、と思う。何が日常でなくなるかはわからないものだから。
「こちらの日常はあちらのの非日常」
「いまの日常はいつかの非日常」
って感覚はなくしたくないな、と。ぼんやり思う。
それこそ、死ぬ前に思い出す光景だって、
ここぞというナイスショットやハイライトじゃなくて、
何気ない日常ばかりなような、
そんな気がする。
そんなことを思いました。
今日はこのくらい。
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