オランダ南部の町、マーストリヒトには「ブクハンデル・ドミニカネン(Boekhandel Dominicanen)」という、700年以上前に建てられた教会をリノベーションして作られた本屋があります。英ガーディアンやBBCに「世界一美しい本屋」のひとつに選ばれています。
留学生としてこの本屋に何度も通っているわたしが、その魅力を語ってみます。
外は教会、中は本屋
外から見るとどう見ても教会。
入り口には「本屋」などの言葉が25ヶ国語で書かれています。
一歩中に足を踏み入れると、そこに広がるのは異空間。
天井がとにかく高い。
吹き抜けの2・3階をあえて中央からずらして配置することで、この高さを引き立てるように設計されたのだそうです。
2階、3階と上がっていくごとに変わっていく景色もまた楽しめる。
もとは教会、いまは本屋
この本屋の前身は13世紀に建築された「聖ドミニカ教会」。オランダでははじめてゴシック様式で建築された、由緒のある教会。
しかし1794年のナポレオン侵攻をきっかけに教会としては使われなくなってしまい、ながらく倉庫や自転車置場として使われていたのだとか。
Olya Sanakoevさんによる2004年段階のようす。こんな天井の高い自転車置場があっていいの?ぜいたくすぎない?と思ってしまう。
2005〜6年にかけてリノベーションがほどこされ、本屋として生まれ変わりました。英語の本や大学の教科書も扱われています。
モダンだけども、歴史ある教会とうまく調和しているのがすばらしい。教会自体も重厚ではあるけれど、ヨーロッパの教会としては装飾はかなりシンプル。けっして派手ではない。だからこそモダンで落ち着いたデザインともよく合う。
この本屋、経営難で2014年には一時閉鎖されるなど存続が危ぶまれましたが、「Selexyz(セレクシーズ)」から「Polare(ポラーレ)」に経営母体が変わり、ことなきを得ました。
「ブクハンデル・ドミニカネン」のほかに、「セレクシーズ・ドミニカネン」「ポラーレ・マーストリヒト」などいろんな呼ばれ方がされているのはその名残です。
天井画の年季の入り方が歴史を感じさせる。
リノベーション時に修復したそうな。階数をあがるたびに迫っていく感じがまた新鮮。
ステンドグラスもふつうの教会のカラフルなものとは違っていたってシンプル。
光を取り入れることに特化しているような雰囲気。時間によって建物内部全体の光の入り方が変化するのもまた楽しめる。
カフェスペース
奥にはカフェがあり、コーヒーやケーキがいただけます。
もともと祭壇として使われていた部分。中央のテーブルが十字架状になっているのがポイント。
入っているのはCoffeeloversというオランダ南部に展開するチェーン店。
ちなみにマーストリヒトにはスタバがありません。チェーン店でいちばん多いのはこのCoffeelovers。
なんといってもこの吹き抜け感。
こんなに天井の高いカフェがほかにあるでしょうか。わたしは知りません。
眺めているだけで楽しい本たち
外国の本屋って、なんであんな楽しいんでしょう。
表紙がいちいちぜんぶおしゃれ。ながめているだけで楽しい。帯もなしで、ただタイトルとイメージだけで勝負しているあの雰囲気が好き。内容がよくわからなくっても、パラパラめくるだけで楽しい。
たとえばこのおしゃれな本たち。
これ、ぜんぶ料理レシピ本です。素敵すぎてずるい。ずるすぎる。
中の写真もデザインもぜんぶおしゃれ。レシピ本とは思えないほど装丁も凝っている。載っている料理もおいしそうで、うっかり買って帰ってしまいたくなる。
日本食の本もありました。なんとラーメンの本まで。
立ち読みできなかったけど、どんなレシピなのか気になる。
語学本コーナー
語学本コーナーもながめているとお国柄事情が見えてきて面白いです。
外国語の中では、英語が一番大きいスペースをとっています。
次点で大きいのがドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語。しかも英語に迫る勢いで充実しています。
まぁ、そうだろうなと思う。
なんせ、自転車で30分も行けばフランス語圏のベルギー。バスに乗れば1時間もしないうちにドイツ。ほかのヨーロッパ言語がそんなに身近なら、やってみよう、と思う人もとうぜん多いでしょう。
日本語はほんの数冊だけ。中国語のほうがもうちょい多かった。
「サルでもわかる日本語」といったタイトルの本を手にとってパラパラめくってみたら、全部アルファベットでした。ひらがな・カタカナ・漢字は全滅。完全に「話す」と「聞く」に絞った本になっていました。
文字からやったらキリ無いというのもあるだろうけど、コミュニケーション重視な面がやっぱり強いのかな、なんて思わされる。
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加えて、アート本コーナーがこの規模の本屋にしてはかなり充実しています。
びっくりしたのが、完全に日本語の本が売っていたこと。
オランダ語の対訳も何もない。どうやら完全に浮世絵の画集として扱われているもよう。
ほかにもCDどころか、レコードまで販売されています。
ただの本屋としてのみならず、イベントスペースとしても使われており、コンサートやトークショーなどがしょっちゅう開催されています。
お手洗いにあった貼り紙。
ほかにもカレンダーや手帳、マーストリヒトのガイドブックや写真集、はがき、文房具などのグッズ類など、ほんとうにいくら見て回っても飽きない魅力的なものばかりです。
アクセス・営業時間情報
場所はマーストリヒトの旧市街地ど真ん中、フライトホフ(Vrijthof)広場のすぐ近く。
道一本入る&そこまで目立つわけではないのでパッと見で見つけるのは難しいかも。
2017年1月現在の営業時間は以下の通り。
- 月曜日 10:00 - 18:00
- 火曜日 09:00 - 18:00
- 水曜日 09:00 - 18:00
- 木曜日 09:00 - 21:00
- 金曜日 09:00 - 18:00
- 土曜日 09:00 - 18:00
- 日曜日 12:00 - 18:00
休業日は以下の通り。
- 12月25・26日
- 1月1日
- 第一復活祭(毎年変動・2017年は4月16日)
- 聖霊降臨祭(毎年変動・2017年は6月4日)
- マーストリヒトのカーニバル期間(毎年変動・2017年は2月26日〜28日)
ほか、12月には何日か変則的な営業時間の日があるので公式サイトで要チェック。
参考サイト
Boekhandel Dominicanen | Home
公式サイト。オランダ語のみ。
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マーストリヒトにお越しの際はぜひ、いやぜったいに訪れてみてください。
今日はこのくらい。
◯今日の過去記事◯
www.zazaizumi.com