ザザイズム

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せっけん香る石造りの街 トルコのマルディンが素晴らしすぎた

トルコを3週間巡った中で、いちばん気に入った街がマルディン。

トルコの南東部、シリア国境にほど近い場所に位置する街。その歴史は紀元前4500年にも遡るとか。ベージュの石灰岩でつくられた歴史的な街並み全体が「野外博物館」とも称される。国内観光客には大人気だけど、外国人観光客はたいへん少ない穴場の街。

トルコ後半の旅程を迷っていたころ、現地で出会った人に「トルコの南東部は良い」と激推しされ、半信半疑で行くことを決めた。結果、想像以上にすばらしかった。

そんなマルディンを気に入った理由を書き留めてみる。

マルディンがすばらしすぎた理由

1. 中東感あふれるエキゾチックな町並み

行く前の印象だと、マルディンの何がそこまで人気なのかピンとこなかった。ガイドブック映えするようなカラフルな街並みや派手な形のモスク、といった雰囲気ではない。

けれども、この街の良さは歩いてこそわかる。



行けども行けども石造りの路地と階段がひたすら続く。





路地すべてが絵になる。それも路地の角を曲がるたびにまた新たに絵になる風景が広がる。





旧市街に並ぶ住宅もいちいち窓やドアの造りが美しい。





通りやバザールには活気がある。都市によくあるごちゃごちゃ汚い部分がほとんどない。とてつもなく乾燥気候のわりには埃っぽい感じがしない。

ただ散歩するだけで魅入られる町。写真映えもだけど、何より歩き映えする街だと思った。



2. 文明発祥の地、メソポタミアの大平原

マルディンという名前はスリヤーニ語の城壁という言葉に由来する。その名の通り、城山の斜面にびっしりとへばりつくように街が広がっている。標高も1000m近くある高台の街。




街の高台からメソポタミアの大平原を望める。私が行ったときは空気が霞みがかっていたけれど、それでもすばらしいパノラマだった。

この景色の果てはシリアに続いている。




夜景もすごい。メソポタミアの大平原が遠く遠く広がる。ぽつぽつと点在する町の光が空気でゆらゆらきらめく。これは写真では伝わらない。カッパドキアとかイスタンブールとも全然違う、ここでしか見られない独特の夜景。




3. 民族と文化の交差点

マルディンは古くからさまざまな民族の支配を受けてきた街。いまもクルド人、アラブ人を始めとして多民族が住んでいる。トルコ語のほかアラビア語もよく通じるようで、現地の人にアラビア語をしゃべれるかと何度か聞かれた。

マルディンから70km離れたミディヤトを中心にスリヤーニ(アッシリア人)という民族も住んでいる。スリヤーニはキリスト教を信仰し、イエス・キリストが話していたというアラム語を今でも継承している。

マルディンやミディヤト、その周辺にはモスクやマドラサ(イスラム神学校)、シリア正教会などが混在している。そのどれもが美しい。



ズィンジリエ・メドレセ

14世紀設立のイスラム神学校。マルディンの丘の上にあり、遠くからでもよく見える。美しいレリーフ装飾に彩られている。



屋上からはドーム越しにマルディンの街並みとメソポタミアの大平原を見渡せる。



ザファラン修道院

4世紀にキリスト教徒が使いはじめ、13世紀から20世紀までシリア正教会の総本山となっていた聖地。



今でも修道院として活動を続けている。



ダラ遺跡

マルディンから30kmに位置する遺跡。5世紀ごろにローマ軍が基地を起き繁栄したのだとか。

ネクロポリスと呼ばれる大きな墓地や巨大な地下貯水池が点在する。1500年以上前のものとは思えない。




4. どことなく漂うせっけんの香り

マルディンは固形せっけん天国。そこいら中に専門店や露天があり、街を歩くとせっけんの香りが漂ってきて癒やされる。




マルディンで特に有名なのはブットゥム(Bittim)という野生種のピスタチオを用いたせっけん。主に髪向けで、抜け毛やフケに効くのだとか。




その他にも何十種類ものせっけんがあって選びたい放題。オリーブやヤギミルクにピスタチオ、珍しいものだとカタツムリなんてのもある。そのほとんどは20リラ≒160円前後とお手頃。イスタンブールで買うと2倍はする。

固形せっけん派のわたしには大変うれしく、10個ほど爆買いした。



5. 2000年の歴史を持つお菓子

マルディンにはパン屋が多い。その中で目立つのが店先にずらっと並ぶこの焼き菓子。名前はスリヤーニ・チョレーイという。かつては婚約の儀式に使われたお菓子で2000年もの歴史があるのだとか。

トルコのお菓子は激甘が基本なのだけど、これはぜんぜん違う。甘さよりも複雑なスパイスの風味が前面に出ている。

パン部分はシナモンなどのスパイス風味で、中にはデーツやタヒニ(ゴマペースト)を練ったあんこみたいなペーストが入っている。口の水分が吸われるからチャイと一緒に少しずついただくとタイムスリップできる。安くて日持ちもする。朝食代わりに日々少しずつ食べていた。



6. メソポタミア産ワイン

シリア正教徒の作ったスリヤーニ(アッシリア)ワインが有名で、その歴史は6500年にも登るのだとか。
南東部はイスラム教徒の割合が多いからか、酒屋をあまり見ないのだけれど、マルディンは違う。ワインショップがそこいら中にある。赤ワインのボトルが180リラ≒1440円くらいからある。




ワインバーでもワインをいただいた。これが激ウマだった。ふだんは圧倒的ビール派でワインの味の違いがいまいちわからないのだけど、このワインはほんとうに美味しいとハッキリ思えた。ワインというより「ぶどう酒」と呼びたくなる、果実味にあふれたワイン。

ワインバーは洞窟みたいなつくりで、アートにまみれた不思議な雰囲気のお店。気に入った。試飲の量が試飲じゃないレベルの太っ腹だったり。
店員さんのいとこが日本に住んでるからと日本語の発音を尋ねられて盛り上がったり。とても良い思い出になった。



7. かわいい動物たち

猫大国トルコ、もちろん猫はマルディンにもそこら中にいる。



ここマルディンで目立つのは馬とロバ。階段の多い町だからか、荷物運びにまだまだ活躍しているもよう。



馬は美しく飾り立てられていた。




インコもよく見る。撮影用なのか外飼いの大型インコもいた。食堂にはヨウムがいて、写真を一緒に撮ってもらっている最中にみごとにつつかれた。




まとめ

マルディン、国内観光客に大人気なのはドラマのおかげなのかと思っていたけど。実際歩いてみるとそりゃ人気になるわと思った。写真じゃ伝わりきらない空気感と統一感がすばらしい。




ただ、訪問の際には情勢をよく確認しておくことをおすすめ。300kmほど離れた南東部の街が砲撃を受ける*1など、最近トルコ・シリア関係がやや緊張ぎみ。

日本の外務省だと「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」に指定されている。イギリス外務省の渡航情報だとマルディン自体は危険地域に指定されておらず、シリア国境10km地帯だけが危険地帯に指定されている。こちらのほうが今のところ実態には合っていると思う。

www.gov.uk

私が訪れた2022年10月はまったく平和に感じた。ほど良く観光地化が進んでいて、スリといった軽犯罪系の不安もかなり少なそう。人々もたいへん親切だった。





トルコといえばイスタンブールやカッパドキアが有名だけれど、それらを差し置くレベルで気に入った。イスタンブールから航空便もあるから意外とアクセスもしやすい。

ひと味違うトルコを楽しんでみたい人にぜひおすすめしたい。




今日はこのくらい。






○今日の過去記事○

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