ザザイズム

書くことは命の洗濯。日常で考えたことや国内外旅行記などつづっています。

オランダ留学で出会った忘れられない友人の話

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留学帰国からはや9ヶ月弱。オランダで出会った今でも忘れられない友人、ハンナ(仮名)のことを書き留めてみる。


ハンナは正規生としてマースに在学しているポーランド人の子。わたしとは授業を通して仲良くなった。

スピリチュアリストでベジタリアンで大麻愛好家で、何よりとんでもなく親切な子。そんな話。





ハンナはいわゆるスピリチュアリスト。
Facebookのプロフィールの宗教欄を借りて言えば、「Spiritual but not religious(スピリチュアルだが宗教的ではない)」という立場。



何度かハンナのアパートを訪れたことがある。

料理中に食材や調味料を入れるとき、
リラクゼーション音楽をイヤホンでわたしに渡して「これで瞑想するといいるよ」と話しているとき、
果てしなく込み入った塗り絵の本を見せてくれたとき。

何かと、日常のどこでもつきものだったのが、眉間を指差しながらの

「これ、『アイ・オープナー(「目」を開かせるもの)』だからね」

ということば。

この「目」、「内なる目」とか「チャクラ」とかそういう形容をされる「目」のことのようで。精神世界の入り口、とか、そういうもののはず。



ポイという白いボールに紐がついたものを見せてくれたこともあった。

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これも「アイ・オープナー」で、無心になってぐるぐる縦横無尽に回し続けると瞑想状態に入れるそうな。たしかに集中するとよけいなことを考えるひまはなくなる。



そういったスピリチュアリズムの一種がハンナの中で一本の支柱となっていて、それはことばにも行動にもあらゆる面で感じられた。







ハンナはベジタリアン。

正確に言えばヴィーガン。卵や乳製品といった動物性食品も食べない。
高校生くらいのころに動物愛護を中心とした動機でヴィーガンになったそうな。

何回かその子のご飯をいただいたことも。

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美味しかった。あっさりと香ばしさを効かせるタイプの料理が多い。ケール、マカパウダーといった「スーパーフード」をふんだんに使っているとも調理中何度も説明してくれた。








衝撃的だったのが、ドラッグ関連への姿勢。

お酒は飲まない。
大麻とマジックマッシュルームだけは使う。




ハンナは部屋でよく大麻をタバコ紙で器用に巻いていました。

わたしは煙が苦手だから勧められても断っていたけど、その巻いてから吸うまでの流れがみょうに印象に残っている。
あまりにも日常感のある、こともなげな手つきで。

部屋の棚の一角には、マジックマッシュルームが万国旗かインテリアか何かのように糸を通して吊るされてた。「これ?ああ、今日は使いたくないな。明日は授業だからね、いまはその時じゃないでしょ」とこともなげに言っててびっくり。
部屋の壁にはキノコを鮮やかでサイケな色で塗った絵がかかっていて。聞くとハンナが描いたもので、「いつかキノコとスピリチュアリズムとの関係について論文を書いてみたいの」と熱を込めて語ってくれた。



ハンナが言うには、
「アルコールは害だから、すすんでは飲まない」
「昔はケミカルなドラッグも使ってたけど、もうしない」
のだと。
大麻とマジックマッシュルームはケミカルではない「ナチュラル」で「アイ・オープナー」だから、と*1





こんなふうに書くと「なんじゃその子、ぶっとんでね……」「ヤヴァくね」と思う人もいるでしょう。


わたしも最初びっくりしたけど。
でも、すぐに「こういう見方と考え方ってあるんだな」という気持ちになった。
「その通りだ」と感化されているわけでも、「そんなわけないだろ」と反発するでもない。

そういう感覚になったのはなんだろうかな、と。







ひとつには、そもそもオランダの中ではそんなに珍しいことでもない、という空気が身にしみて感じられたから。



ベジタリアンの友人は他にも何人もいたし、オランダは大麻合法大国。


ハンナとフランス人のエマ(仮名)といっしょに、ヘッドショップという大麻喫煙具屋さんに寄ったときなんて、「ここなら何時間でもいられる!」とテンションダダ上がりでふたり盛り上がってた。

そのかたわらで、わたし、
使い方の想像もつかないようなものの海の前で呆然。

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ふたりの話すことは、ふたりにとっては「身近なこと」「自然なこと」で、20年間日本に住んできたわたしにとってはちっとも身近でも自然でもなかった。



そのはずなのに、あのオランダという世界の中では、身近でも自然でもなくても「そういうものがあるんだな」と、ただそういう感想にならざるをえない、そんな感覚があった。


だって、
ヘッドショップだって、大学から50mと離れていない場所に数軒集まっていて。
大学の目の前にアダルトショップとオランダの大麻店「コーヒーショップ」があって。

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そういったものが日常風景のひとつで。オランダはそんな世界だった。その圧倒的な空気感が、ただそこにあった。








もうひとつには、そういう「スピリチュアリズム」に対して全面的に賛成してはいないけど否定もしていない感覚があるからじゃないか、と思う。


わたし自身は特定の宗教に属してはいないし、「海外で宗教について聞かれたら『無神論者』と答えるのはNGだ、『神道と仏教を信仰している』と答えておけ」ということばが話題になってたけれど、私に関してもこのことばはだいたい合っているのだと思う。
eikaiwa.dmm.com


ただ、もう少し正確にいえば「不可知論者」なんじゃないかと思う。「神や神的なものの存在は、わたしには知りようがない」という立場。

わたしが見ているような世界とは別の「何か」があってもおかしくはないとは思う。
けれども、「何か」は今わたしがいるこの世界のことばでは語りようがないようなものなんじゃないか、と直感している。

そのうえで、「何か」を個人的に感じて個人的に実践するのなら、とくに不自然なこともないんじゃないかな、と思う。



ハンナも彼女の主義を一切わたしには強制してこなかった。

だからわたしも、「こういう世界もあるんだな」と、ただ受け止める感想になったんじゃないかな。







そして、何より、ハンナは親切にもほどがあるくらい、親切にしてくれたから。

スランプ中助けに助けてくれたのがハンナで。
途方にくれてたわたしのプレゼンの練習にほぼ丸一日かけて付き合ってくれたり、
何年か前にちょっと勉強していた日本語のテキストを「ざざいずみが来たから」とわざわざ引っ張り出してくれたり、
ご飯やお茶をごちそうしてくれたり、
なにかにつけて「困ってない?」と声をかけてくれたり。

授業に散々苦労しまくりで、根っこが人見知りで、人に助けを求めるのが下手なわたしにとって、どれほど助けられたか。





なにより、プレゼン前に緊張していたわたしに
「がんばって」
って一生懸命書いてくれた感満載の紙を渡してくれたときの感動といったら……!

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留学中でもトップクラスに嬉しかった瞬間。







わたしにとってハンナの存在は「スピリチュアリスト」だとか「大麻愛好家」だとか、そういうワードで形容したくなくて。矛盾してるかもしれないけれど、たしかにそういった面は衝撃的だったけれど、同時にそこまで重要なことでもないのです。

「とんでもなく親切」ってことのほうがずっと重要で。だからこそ忘れられない友人なのです。






そんな思い出話でした。



今日はこのくらい。




◯今日の過去記事◯
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*1:規制の面を補足しておくと、オランダでは大麻は所定の量を超えない範囲の所持なら非犯罪。マジックマッシュルームは2008年に規制が敷かれたものの、有効成分自体は規制されておらず、地下に発生する有効成分を含むトリュフ部分が「マジックトリュフ」として堂々と売られているチグハグなグレーゾーン状態。